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東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)288号 判決

原告 株式会社入船

被告 株式会社小僧寿し本部

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

「特許庁が、昭和六三年一〇月二〇日、同庁昭和五五年審判第二〇四五三号事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二  被告

主文同旨の判決

第二請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

被告は、別紙(一)に示すとおりの構成よりなり、指定商品を第三二類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く。)とする登録第一二四二三一五号商標(昭和四八年一月二七日商標登録出願、昭和五一年一二月一六日設定登録、昭和六一年六月二四日更新登録出願)(以下「本件商標」という。)の商標権者であるところ、原告は、昭和五五年一一月八日、本件商標につきその商標登録無効の審判を請求した。特許庁は、右事件を同庁昭和五五年審判第二〇四五三号事件として審理した結果、昭和六三年一〇月二〇日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同年一一月一六日原告に送達された。

二  本件審決の理由の要点

1  本件商標の構成、その指定商品及び本件商標登録出願日、設定登録並びに更新登録出願日は、前項記載のとおりである。

2  請求人(原告)が本件商標の登録無効の理由として引用する登録第五〇五八九一号商標(以下「引用商標」という。)(別紙(二))は、「小僧」の漢字を縦書きしてなり、旧第四五類「他類に属しない食料品及び加味品」を指定商品として、昭和三一年一〇月二九日に登録出願され、昭和三二年七月二五日に登録された商標であつて、該商標権は現に有効に存続しているものである。

3  無効審判請求の理由

(一) 本件商標は、小僧が下駄を履き、お辞儀をしている状態を示す図形からなるものであるから、これよりは直ちに「小僧、番頭さん」を想起することは、需要者、取引者の容易に認めるところである。しかも、出願人は株式会社小僧寿し本部であるところ、一般に商人がその氏名または商号の一部をとつて商標の構成の一要素とすることは、我が国の商取引の実情に照らしても、しばしば行われることよりすれば、本件商標についても、出願人である小僧寿し本部と該図形との関連において、即、「小僧」なる呼称を生ずるものであることは疑う余地のないところである。

(二) 引用商標である「小僧」からは、「コゾウ」の称呼及び「小僧」の観念を生ずることは明らかであり、また、その指定商品も、旧商品区分第四五類は、「他類に属せざる食料品及び加味品」として、「肉類、卵、鰹節、昆布、味噌、漬物」等を含むものであるから、現行の商品区分第三二類のうち「食肉、卵、食用水産物、加工食料品」において全く同じ商品に該当する。

(三) 図形から生ずる意味がどのようなものであるかは、その図形が指定商品の需要者、取引者の間で簡易迅速に行われる商取引上、どのように理解されるかによつて決めるべきものであることよりすれば、その指定商品である「食肉、卵、食用水産物、果実」などの食料品との関連から考察して、本件商標よりは直ちに「小僧」と理解し判断するといえるから、本件商標と引用商標とは、「小僧」の観念及び「コゾウ」の称呼において類似し、これがため、本件商標を使用すれば、商品の出所の誤認混同を生じ、競争秩序が乱れ、登録商標の出所表示機能を信頼する一般需要者、そして、請求人(原告)である株式会社入船の利益を害することが明らかである。

(四) 前記のごとく、本件商標は、称呼及び観念において引用商標と類似するものであるから、本件商標の登録は商標法第四条第一項第一一号に該当し、同法第四六条の規程により無効とせられるべきものである。

4  被請求人(被告)の主張

(一) 本件商標と引用商標の外観構成を対比すると、本件商標は、丁髷頭にねじり鉢巻きをしめ、胸には晒を巻き、着物の上に絆纒及び前掛けをして、高下駄を履いている人物が、前掛けの前で両手を揃え、お辞儀をしている姿を正面より描いてなる図形商標であるのに対し、引用商標は、「小僧」の漢字を楷書体で縦書きしてなる文字商標であるから、両者は、その構成を全く異にし、外観上非類似であることは明白である。次に、称呼及び観念についてみると、本件商標は、前記のとおりの極めて複雑な構成の図形からなるものであつて、格別の呼称、観念を生じ得ないものであるのに対し、引用商標「小僧」は、「幼少の僧、雛僧、商店に使役される少年の称、青少年を卑しめていう語」の語義を有し、「コゾウ」の称呼を生ずるものであるから、両商標は、その称呼、観念において対比すべくもなく、非類似のものといわざるを得ない。

(二) しかして、「小僧」とは、前記の語義を有するものであるが、本件商標の図形の該人物が幼年の僧、雛僧でないことは論ずるまでもない。また、該人物の丁髷が成年男子のものであること、商店に使役される少年、すなわち丁稚は絆纒を着用しないことが通例であること、商家の者が営業上、高下駄を履くことはないこと等すらすれば、該人物が商店に使役される少年であると理解することは到底できない。更に、幼年の僧でも商店に使役される少年でもない該人物が、殊更卑しめられて小僧と指称される理由は全く見い出すことができない、してみれば、いかなる意味においても「小僧」を描いたものとはいえない本件商標からは、「コゾウ」(小僧)の称呼、観念は生じ得ないといわなければならない。

(三) 請求人(原告)は、本件商標が被請求人(被告)である株式会社小僧寿し本部の所有であることを理由に、本件商標から、その商号の略称ともいえる「小僧寿し」の称呼、観念が生ずると主張するが、図形のみからなる本件商標について、この主張は妥当でなく、「小僧」の称呼、観念が生ずることはない。

5  本件審決の判断

(一) 本件商標と引用商標の類否についてみると、本件商標は、別紙(一)に示す構成の図形からなるのに対し、引用商標は、別紙(二)に示すとおり「小僧」の文字を普通に書してなるものである。

(二) したがつて、本件商標は、丁髷頭にねじり鉢巻きをしめ、胸に晒を巻き、着物の上に絆てんをはおり前掛けをして高下駄を履いている人物が、前掛けの前で両手を揃え、お辞儀をしている姿を正面より描いた図形のみからなるものであるから、商家で働く人物であることは肯定し得るものであるとしても、これを以て、直ちに小僧とか丁稚という特定の称呼、観念が生ずるとはいい難いものである。

(三) 一方、引用商標である「小僧」の文字(語)からは、その文字に照応して「コゾウ」の称呼を生ずることは明らかであるが、その観念において、〈1〉年少の僧、〈2〉商店で使われている年少の男店員、〈3〉年少の男子をあなどつていう語などの語義を有することは日常一般に認識されているところであり、辞典(広辞苑)などにも記載されていることは、乙第一号証の二(本訴乙第二号証)からもこれを認めることができる。

(四) 小僧の文字(語)が、右のようにその時々、その使用する目的によつて、前記〈1〉〈2〉〈3〉という異なる観念が生ずるという多義的意味合いを有する文字(語)であることからすれば、「小僧」の文字(語)からは、必ずしも商家で働く丁稚の一種である「小僧」のみを観念するとはいえないというべきであり、また、この多義的な意味合いを有する「小僧」という概念の中で描かれるさまざまな図形の中で、本件商標のごとき図形のみがこれを代表する図形として特定しているものとも認められない。そうとすれば、「小僧」「コゾウ」という特定の観念、称呼を生ずるものとは認め難い図形よりなる本件商標と、「コゾウ」の呼称を生ずることは明らかであるとしても、多義的な意味合い有する「小僧」の文字(語)よりなる引用商標とは、外観はもとより、観念及び称呼のいずれの点からも共通する部分を見出し得ず、非類似の商標といわざるを得ない。

(五) したがつて、本件商標は、商標法第四条第一項第一一号に該当しないから、同法第四六条第一項第一号の規定により、その登録を無効にすることができない。

三  本件審決を取り消すべき事由

本件審決の理由の要点1ないし4の摘示は認める、同5(一)は認める、同(二)のうち本件商標から直ちに小僧とか丁稚との特定の称呼、観念が生じないとの点は争い、その余は認める。同(三)は認める。同(四)及び(五)は争う。本件審決は、本件商標からは「小僧」、「コゾウ」という特定の観念及び称呼が生じないとの誤つた認定をしたために、本件商標と引用商標との類似性を否定するという誤つた結論を導いた点において、違法であるから取り消されるべきである。

本件審決は、図形商標である本件商標の段階的発展性を看過したために、本件商標からは、「小僧」、「コゾウ」という特定の観念及び称呼が生ずるものとは認め難いとの誤つた認定判断をしたものである。すなわち、登録商標の類似範囲は時の経過とともに変遷するものであり、その商標の登録時に固定されるものではないから、その登録無効審判請求事件において、出願に係る商標が他人の登録商標と類似するか否かの判断は、これに対する審決がなされる時期における事情を基準としてなされるべきものである。そして、図形商標は、出願登録された当初の段階においては、一般取引者、需要者の間に周知性がなく、未だ見慣れないものであるために、そこから、特定の観念、称呼が生ずるとはいえない場合があるとしても、当該図形商標を商品に付してその出所を継続的に大規模に宣伝することによつて、一般取引者、需要者は、次第にその図形商標とその商標権者の販売に係る商品及び出所との結び付きを直感するようになり、段階的発展的に、その図形商標から直ちに特定の観念と称呼を生ずるようになることは日常一般に経験するところである。これを本件商標についてみると、本件商標は、本件審決当時には、それ自体単独で使用されてはおらず、全国的な多数のチェーン店において、商品名と出所名とを表示するところのほとんど同じ「小僧寿し」なる文字を常に本件商標の周辺に配した態様において使用されている(甲第五号証ないし第一六号証)。「お持ち帰り寿司」の包装紙にも、本件商標と右同様の文字が印刷されている。もつとも、被告は本件商標の登録査定時においては、本件商標と「小僧寿し」の文字を合わせ使用していたものではないが、その後次第に本件商標を右のような態様で使用し始め、現在に至つている。このようなことから、年月が経過するに従つて、一般取引者、需要者は、図形商標である本件商標から、直ちに「小僧寿し」を観念し、また、本件商標を「コゾウスシ」と称呼するようになり、すでに本件商標の使用開始から十数年を経た今日においては、本件商標と右の「小僧寿し」なる商品名、出所名とは一体となつて観念され、称呼されるに至つている。また、本件商標権者である被告自身においても、本件商標を「株式会社小僧寿し本部」の商品たる「小僧寿し」の商標として全国的大規模に使用することを意図し、少なくとも「小僧」を表す図形を用いて商品を象徴せしめようとの意図のもとに本件商標を使用していることは、被告代表者の著書からも十分窺え知ることができる。被告代表者自身、その著書(甲第四号証)において、本件商標を使用した理由について、「その図形を見ただけでもお年寄りにも子供さんにも小僧寿しだとわかる上、風がわりな絵であり、名前であることから覚え易く、忘れにくく、『小僧』という名が庶民に親しみやすいからである。」とはつきり述べている。そして、本件商標は、右のような著者の意図どおり、現在ではすでに一般世間においても、本件商標を「小僧寿し」として観念し、称呼するに至つている。このように、本件商標が、「小僧寿し」として観念され、称呼されることは明らかであるところ、「小僧寿し」のうち、「寿し」の部分は、単に商品名を表示する普通名詞であつて自他商品識別力はなく、自他商品識別の機能をもつ部分は「小僧」の部分にある。したがつて、この「小僧」の部分から「コゾウ」の称呼を生ずることになるのである。

一方、引用商標からは、本件審決の認定したとおり「小僧」の文字に相応して「コゾウ」の称呼が生ずるものである。したがつて、本件商標は、「小僧」の観念と、「コゾウ」の称呼を共通にすることから、引用商標と類似する商標であるというべきである。なお、本件審決は、本件商標である図形の意味や引用商標である「小僧」の意味を詮索しているが、両商標の類比判断の基準時を本件審決時と解する以上、本件商標の登録から十数年を経た本件審決時点においては、取引者及び一般需要者が、本件商標から「小僧寿し」を直感して、「小僧」を観念し、かつ「コゾウ」と称呼するという現実の事実があることからして、本件審決における右の点の詮索には何ら重要性はないというべきである。

第三請求の原因に対する認否及び被告の主張

一  請求の原因一、二の事実は認める。

二  同三の主張は争う。本件審決の認定及び判断は、正当であり、何ら違法の点はない。

1  原告は、本件商標と引用商標との類比判断は本件審決時を基準としてなされるべきである旨主張するが、商標登録の無効を求める無効審判請求事件においては、当該商標の登録査定が誤つているか否かが審理、判断されるものであるから、その判断の基準時は当該商標の登録時であることは明らかである。したがつて、本件審決に本件商標登録後の事情等を考慮してその称呼及び観念を認定したことが窺えないとしても、本件審決は、本件商標の登録時において理解される本件商標の構成に基づいて引用商標との対比判断をしたうえで、本件商標は、引用商標とは、外観はもとより、称呼及び観念のいずれにおいても共通性のない非類似の商標であり、商標法第四条第一項第一一号の規定に該当しない旨認定判断したものであるから、本件審決の右の認定判断は正当であつて何ら誤りはない。

2  原告は、本件商標から、「小僧寿し」の称呼及び観念が生ずる理由をるる主張するが、いずれも失当である。すなわち、まず、本件商標は、原告の指摘する他の標章(「小僧寿し」の表示)と常に同時に使用するものとして商標登録出願されたものではなく、また、本件商標の登録時において特定の他の標章と常に同時に使用されることが明らかなものでないから、事前に予測し得ない当該「他の標章」を考慮に入れて、本件商標が「小僧寿し」なる標章と常に同時に使用されることを前提として、本件商標の観念及び称呼についての認定判断をすべきでないことは明白である。したがつて、被告及びその傘下のチエーン店がその店舗の看板に、たまたまその著名な略称である「小僧寿し」の文字を本件商標と同一の標章とともに表示しているからといつて、本件商標から「小僧寿し」及び「コゾウズシ」の観念や称呼が生ずるものでないことは明らかである。また、一般に、標章それ自体からは伺い知れない商標採択の意図により、その商標の観念や称呼が定まるものではないから、被告代表者における本件商標の採択の意図がどのようなものであれ、それによつて本件商標の観念や称呼の認定が左右されることはないものである。更に、本件商標の設定登録後に、本件商標と同一の標章が被告及びその傘下のチエーン店舗の看板に盛大に使用された結果、現在では被告及びその傘下のチエーン店舗が使用する表示として著名となつているとしても、本件商標である図形商標自体が、「小僧寿し」「コゾウズシ」として観念、称呼されている事実はない。結局、本件商標は、本件審決が認定したように「丁髷頭にねじり鉢巻きをしめ、胸には晒を巻き、着物の上に絆纒及び前掛けをして高下駄を履いている人物が、前掛けの前で両手を揃え、お辞儀をしている姿を正面より描いた図形からなるもの」であるから、その構成から看取される意義を直ちに簡明、適切な言葉で端的に言い尽くせるものではない。したがつて、本件審決からは、格別の観念、称呼は生じ難いものであるから、これと同旨の認定判断をした本件審決には何ら誤りはない。

3  他方、引用商標からは、その文字に対応して「コゾウ」の称呼が生ずることは、被告も争わないが、「小僧」の文字(語)は、本件審決の指摘したとおり異なる観念を生じさせる多義的な意味合いをもつものであつて、必ずしも商家で働く丁稚の一種である「小僧」のみを観念させるものとはいい得ないのである。したがつて、本件商標と引用商標とは、外観はもとより、観念及び称呼のいずれの点からも共通する部分を見出し得ない非類似の商標というべきであるから、本件審決の認定判断は正当であり、本件審決には何ら違法な点はない。

第四証拠関係〈省略〉

理由

一  請求の原因一及び二(特許庁における手続の経緯及び本件審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告の主張する審決取消事由の存否について判断する。

1  まず、商標法第四条第一項第一一号の規定に該当することを理由とする商標登録無効審判請求における判断の基準時について、検討する。商標登録出願に対する登録査定に当たり、同号の登録要件の存否は、同査定時を基準として判断するのであるから(同条第三項)、登録無効事由の存否、すなわち右の登録要件の定めに違反して誤つて登録査定がなされたか否かを判断する商標登録無効請求審判手続においても、その判断の基準時を登録査定時とすべきは当然である。原告の主張は既にその前提において失当であり、採用することができない。

2  次に、本件登録査定時を基準として、本件商標について、商標法第四条第一項第一一号に規定する登録要件の存否、すなわち本件商標と引用商標の類否について、検討する。

(一)  原告も、被告が本件商標の登録査定当時において、本件商標と「小僧寿し」なる文字を合わせ使用していたとの事実まで主張するものではなく、また、そのような事実を認めるに足りる証拠もないのであるから、商標の観念、称呼につき、原告主張のように、商標自体の構成のほか、文字との併用など使用態様を考慮に入れることが仮に許されると解しても、本件においては、本件商標の構成自体からこの点を判断すれば足りるものというべきである。

(二)  そこで、本件商標の構成自体からいかなる観念、称呼が生ずるかについて検討する。

別紙(一)の構成の本件商標が「丁髷頭にねじり鉢巻をしめ、胸に晒を巻き、着物の上に絆てんをはおり前掛けをして高下駄を履いている人物が、前掛けの前で両手を揃え、お辞儀をしている姿を正面より描いた図形のみからなるものであるから、商家で働く人物であることを示すことは肯定し得る」との趣旨の本件審決の認定判断は原告も争わないところであり、本件商標の構成自体からみて、右認定判断が正当であることを窺うことができるから、本件商標に接する需要者は、本件商標が「商家に働く人物」を示していると認識するものということができる。

他方、引用商標が別紙(二)のとおりの構成であり、「コゾウ」の称呼を生じ、その観念において、本件審決の理由の要点5(三)に摘示された辞典(広辞苑)に記載されている三つの語義を有することが日常一般に認識されていることは、当事者間に争いがない。しかして、本件商標に接した多くの需要者が前記のような認識の域を越え、本件商標に示された人物が「年少の男性」又は「見習中の男性」であるとの明確な印象を一見していだくとすれば、本件商標は、まずその観念において、引用商標の「小僧」が有する第二の語義から生ずる観念、すなわち「商店で使われている年少の男店員」と相通ずるものがあることは全く否定し去ることはできないが、全く先入観なく本件商標に接した需要者が、本件商標に示された人物について、一義的に右のような明確な印象を一見していだくものと認めることは、本件商標の外観に照らし、甚だ困難であるといわざるを得ない。

(三)  そうであれば、本件商標から引用商標の有する前記のような観念、称呼が生ずるものと認めることはできず、また、両商標は明らかにその外観を異にする。したがつて、本件商標と引用商標とは、いずれの点からも共通する部分を見出し得ないところの非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第四条第一項第一一号の規定に違反して登録されたものではないとした本件審決の認定判断は正当である。

三  以上のとおりであるから、その主張の点に認定判断を誤つた違法があることを理由に、本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。

よつて、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法第七条及び民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 松野嘉貞 舟橋定之 小野洋一)

別紙

(一)

(二)

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